多くの若者が大学院進学を目指す中、大学院生による成果発表会は、彼らの探究心と研究成果を示す重要なステージとなっています。神戸情報大学院大学(KIC)ではICT、AI、多様性、そして実践的な探究というキーワードを軸に学問的な深みと専門性を提供しています。2024年1月13日(土)にはICTプロフェッショナルコ-ス1年生が1年間の成果を報告し、2年次の研究活動に向けた発表を行いました。
現代の研究世界では、ICTとAIの融合が新たな学問の地平を切り開いている中、KICの成果発表会では、AIを利用したデータ分析から、最先端のICT技術を駆使した実験まで、多岐にわたるプロジェクトが披露されました。
ICTプロフェッショナルコ-ス1年生の村田武洋さんは、特殊詐欺の防止に焦点を当てたシステムの開発について発表を行いました。兵庫県における特殊詐欺の被害状況を分析し、ATM前での詐欺振り込みを防止するためのこのシステムは、ATMの前で電話をしている人を検知するAI技術と、詐欺の予兆を検出して警告を表示する機能を備えています。また、このプロジェクトでは、所属する研究室と明石高専との協力により、音声利用のシステム開発も進められています。
同じくICTプロフェッショナルコ-ス1年生でフルオンライン履修制度にて関東からリモート通学を行っている久保田亮一さんは、日常生活における傘の問題点(置き忘れ、取り間違い、盗難)に注目し、その結果として発生する環境問題(過剰な消費と廃棄)について問題提起を行いました。統計によると、日本では1人あたり平均4.2本の傘を所有しており、年間約1億2~3千万本の傘が廃棄され、これにより、大量のCO2が排出されており、環境に悪影響を与えているとのこと。そのため、久保田さんは傘の紛失や盗難を防ぐためのICTを活用した解決策を提案し、「盗まれない・忘れない傘」の開発を通じて、傘の紛失を防ぎ、廃棄量を減らし、結果として環境問題の改善に貢献することを目指しています。
このように、学生たちはAIやICTの力を借りて、未解決の問題に取り組み、新たな解決策を提示しています。単に技術的な進歩を超え、社会や環境問題への応用にも繋がっているのです。
炭谷俊樹学長から最後に「充実していた発表内容でした。現場の身近な視点と大きな視点をバランスよく持ち、この調子で頑張ってほしい。」とのコメントが労いの言葉があったように、KICの学びは、理論だけでなく、現場感の実践的な探究が重要な要素です。成果発表会を経て、今後学生たちは実際の研究やプロジェクトを経験し、その成果を修士論文としてまとめます。この過程は、問題解決能力、批判的思考、そしてチームワークといった将来に必要なスキルを養います。KICでの学びは、単なる学位取得以上の価値を持ち、キャリアや個人の成長において大きな影響を与える可能性を秘めています。