神戸情報大学院大学(KIC)のICTイノベータコースは、10月から1年が始まります。この10月に2年生に進学した学生たちは、修士修了に向け着実に研究を進めております。2024年10月28日に実施した研究計画発表会では、この1年間で学習した内容や研究成果を発表しました。
2023年度入学の田中翔さんは、持続可能なコーヒー生産サイクルを促進するため、品質評価の向上を目指した研究を計画しています。ルワンダのコーヒー生産において、各コーヒー農家は収穫したチェリー(コーヒーの果実)を農業組合に販売して収入を得ています。この時、農業組合はチェリーの重さに応じて買取価格を決めているため、各農家が収穫するチェリーの熱度が揃わず品質が低下しているという現状があります。その結果、農業組合も農家からの買取価格を上げることができず、農家、農協双方にとって悪循環となってるのが課題です。田中さんは、品質の高いチェリーが生産者によって安定して収穫されれば、協同組合がより高い価格で買い取れるようになり、生産者のモチベーションも向上するのではないかと考えました。
この課題に対する解決策として、協同組合が生産者に提供されるコーヒーチェリーを客観的に評価し、その結果を生産者にフィードバックすることで、品質向上を促す仕組みを提案しています。具体的には、モバイルアプリを使用してチェリーの写真を撮影し、熟度(成熟、未熟、過熟)の割合を数値化して生産者に提供する仕組みを計画しています。
今後のスケジュールとしては、2025年3月にルワンダ共和国にて実地検証を行う予定でそれに向けたプロトタイプの開発に取り組んでいきます。
2023年度入学のMei Yu Laiさんは、日本への外国人観光客が旅行計画を効率よく立てられるよう、ICT技術を活用して観光体験を向上させる研究を計画しています。Meiさんは、日本を訪れる外国人観光客が以下の課題を抱えていると考えています。
・情報過多(情報が多すぎて必要なものを見つけにくい)
・英語や中国語の情報不足(イベント情報や観光地の詳細が日本語のみの場合が多い)
・旅行計画に時間がかかり、疲れやすい
これらの課題に対して、外国人観光客向けの旅行計画ツールの提供を解決策として提案しています。具体的には、観光地やイベント情報をアプリ上で選択させ、それらの移動情報を含めた行程を自動生成するWebアプリケーションを開発予定です。ユーザーが興味のある場所や予算、日程を入力すると、アプリがカスタマイズされた行程を作成する仕組みです。このアプリケーションの開発には、データベース、レコメンデーションエンジン、AIを活用した行程生成機能を使用する予定です。
今後のスケジュールとして、内部テストやユーザーテストを行い、最終的に訪日旅行者を対象とした実証実験を実施する計画です。
ICTイノベ―タコース2年生のMei Yu Laiさん 遠方のため、オンラインでの発表
それぞれの資料で提示されている課題や解決策は異なるものの、いずれもICT技術を駆使して生産性や効率を高め、持続可能な社会に貢献しようと研究を進めています。神戸情報大学院大学(KIC)は、このような社会のあらゆる課題に対し、ICT技術を駆使することで実社会に役立つ課題解決手法を学び、研究をする大学院です。
今後の研究成果が楽しみです。