探究実践授業 最終プレゼンテーション開催
神戸情報大学院大学(KIC)では、2025年10月に入学したICTイノベータコースの新入生たちが探究実践授業の集大成となる最終プレゼンテーションが開催されました。
本授業は、学生がチームを組み、実社会の課題を自ら発見し、現場調査やインタビューを重ねながら、ICTを用いた解決策を構築する実践型プログラムです。新入生は必須の授業として履修します。
今回の発表テーマは、交通、農業、教育、医療、環境、そしてスタートアップ金融。
いずれも世界各地で「今まさに困っている人」が存在する課題ばかりです。
共通していたのは、机上の理論ではなく、当事者の声を起点にしていること。
それぞれが課題定義、仮説検証、ICT設計、ビジネスモデルまでを一気通貫で描く発表を行いました。
**渋滞は“避けられる”時代へ
AIで移動のストレスを減らす交通ソリューション**
交通分野のチームは、都市部で慢性化する渋滞問題に着目しました。
既存のナビアプリは「今の渋滞」は示せても、「これから起きる渋滞」は教えてくれません。
そこで提案されたのが、**AIによる渋滞予測と最適ルート提案を行うアプリ**です。
GPSデータとAI分析を組み合わせ、出発前に“避ける判断”ができる移動体験を目指します。
単なるアプリ構想にとどまらず、開発体制や資金計画まで具体化されており、社会実装を強く意識した発表となりました。
**農家の時間と尊厳を守る
行政手続きを変えるデジタル管理システム**
農業分野では、農家が抱える“見えにくい負担”がテーマとなりました。
書類提出後、数週間から1年も進捗が分からない。
同じ説明を何度も窓口で繰り返す。
その裏で発生する時間的・金銭的ロス。
これらの声を受けて提案されたのが、**農業行政文書を一元管理・追跡できるシステム**です。
行政DXの第一歩として、現実的かつ即効性のある提案でした。
**学びを“均等”から“最適”へ
AIが支える次世代教育プラットフォーム**
教育分野のチームは、世界的な教育格差と学習の個別最適化をテーマに取り組みました。
提案されたシステムは、AIを活用し、学習者一人ひとりに合わせた学習体験を提供する統合型教育プラットフォームです。
学習進度の可視化、スキルベース評価、オンラインと対面を組み合わせた柔軟な設計により、
年齢や地域を問わず、学び続けられる環境を実現します。
**医療を“つながる”システムへ
国家規模を見据えた統合医療構想**
医療分野では、最もスケールの大きな提案が行われました。
紙カルテによる情報分断、長い待ち時間、地方の医師不足、感染症対応の遅れ。
これらを根本から見直すため、チームは全国統合型の医療情報システムを構想しました。
診断から治療までの流れを劇的に短縮し、
「必要な人に、必要な医療が、適切なタイミングで届く」
未来像が具体的に描かれました。
**ゴミを“資源”に変える
AIと仕組みで支える循環型社会**
環境分野では、リサイクルが進まない本当の理由に踏み込みました。
多くの人は分別の重要性を知っている。
それでも行動に移らないのは、「分別しても結局混ざる」という諦めがあるからです。
そこで提案されたのが、AI分別支援 + 定期回収 + リサイクルまでを一貫して担うサービス。
AIカメラがゴミの種類を瞬時に判別し、正しい分別をガイド。
分別されたゴミは確実に回収され、再資源化されます。
**資金がないから挑戦できない、を終わらせる
スタートアップ資金調達の新しい形**
スタートアップ分野では、起業家が直面する最初の壁、資金調達に焦点が当てられました。
銀行からは「実績がない」、投資家からは「まだ早い」と言われる現実。
このギャップを埋めるために提案されたのが、**クラウドファンディング型プラットフォーム**です。
起業家は自身のストーリーを発信し、支援者と直接つながる。
投資家側には、過去の投資傾向に基づいた案件のみを提示。
「資金」と「知見」を同時に届ける設計がなされていました。
KICで育つのは、課題を見抜き、形にする力
今回の最終プレゼンテーションは、すべてのグループにおいて
「課題は与えられるものではなく、自ら見つけにいくもの」
という探究実践の本質を強く示していました。
社会のリアルに向き合い、試行錯誤し、ICTで解決策を描く。
そのプロセスこそが、変化の激しい時代に求められる力です。
KICの探究実践授業は、
「学ぶこと」が「未来をつくること」へと変わる場所です。





