研究はどう価値につながるのか。大寺研究室修了生2名に聞きました。
神戸情報大学院大学(KIC)大寺研究室を修了した今井渓杜さん、井上泰貴さんの2名が、情報処理学会 第88回全国大会において「学生奨励賞」を受賞しました。
伝統工芸と3Dプリントを融合した研究、そして「土地への愛着」という目に見えない価値に挑んだアプリ開発。分野は異なりますが、どちらもITを通じて社会課題に向き合った研究です。
今回は、それぞれの研究内容や背景、そして今後の展望についてお話を伺いました。
■ 伝統工芸×3Dプリントで新たな表現へ(今井さん)
― 研究テーマについて教えてください
今井さん:
伝統工芸とITの融合をテーマに研究しました。具体的には、乾漆という技法と3Dプリントを組み合わせて、仏像制作の新しい手法を検討しました。
― なぜその研究に取り組もうと思ったのですか?
今井さん:
高校時代から文化財の修復に興味があり、大学では仏像の修復に携わっていました。今回研究テーマにした「乾漆像」は、漆を塗ったり麻布を張ったりして形を作るため、造形力が必要です。そこで細かな造形の部分をITで補えないかと考えたのがきっかけです。芯材と一部の漆層を3Dプリントに置き換えることで、クオリティを高められるのではないかと考えました。
― 研究で苦労した点は?
今井さん:
既存手法では対応できない部分が多く、自分で新しい手法を作り出す必要がありました。解析だけでも100回以上試行錯誤を繰り返しました。
― 技術的な工夫について教えてください
今井さん:
乾漆技法では形状が丸まってしまう課題があるので、曲率解析などを用いて形状補正を行いました。
― 受賞についての感想は?
今井さん:
自分の研究が評価されたことは素直に嬉しかったです。今後の可能性を評価していただけたと感じています。
■ 「愛着」を可視化するアプリ開発(井上さん)
― 研究テーマについて教えてください
井上さん:
「土地への愛着を醸成するアプリケーションの提案」というテーマで研究しました。スマートフォンアプリを使って、人の土地への愛着を高めることを目的としています。
― 研究のきっかけは?
井上さん:
「アプリケーションを作ってみたい」という思いが一番にありました。そこから自分の土地に関する興味関心に結びつけて、人の土地への愛着を深められないかと考え始めたのがきっかけです。大学で地元を離れた後、久しぶりに帰ったときに街の変化を感じました。そこから、土地への関心や愛着について考えるようになり、研究に繋がりました。
― どのような仕組みのアプリですか?
井上さん:
「StepMemory」というアプリで、移動や体験を記録し、それを振り返ることで愛着を深める仕組みです。ヒートマップなどで愛着を可視化する機能も実装しました。
― 苦労した点は?
井上さん:
「愛着」という目に見えないものをどうシステムに落とし込むかが一番難しかったです。ヒアリングを重ねながら、どのような機能があれば土地に関心を持ってもらえるかや、どのようにポイント付けすれば適切な「愛着のスコア」として表示できるかなどを試行錯誤を繰り返しながら開発を進めました。
― 受賞したときの気持ちは?
井上さん:
素直に嬉しかったです。今までやってきた研究が認められ、目に見える成果になったので、報われたような感覚でした
。この経験は明確な自信に繋がりました。4月から社会人として、エンジニアとしての第一歩を踏み出す自信を身につけることができたと考えています。
■ インタビュー動画
井上さんの研究については、インタビュー動画でも紹介しています。(本サイト上部)
研究の背景や開発の過程を、本人の言葉で詳しくご覧いただけます。
■ 今後の展望
― 今後のキャリアについて教えてください
今井さん:
このKIC(神戸情報大学院大学)で、問題に対してどういうアプローチをとるかという論理的な考え方を身に付けることができました。社会に出てもこの思考プロセスは役立つと考えています。今後は、システムエンジニアとして働きます。研究で培った課題解決力を活かしていきたいです。
井上さん:
この研究を通して、自分は開発が好きだと実感しました。これからは、組み込みエンジニアとして、車やIoT分野の開発に携わります。1から設計する経験を活かしたいです。今後も成長し続けたいです。
左から 井上さん、大寺教授、 今井さん
神戸情報大学院大学は、今回紹介したお二人のように、一人ひとりが情熱を持って向き合える課題を見つけ、ICTを活用してその解決方法を探究する専門職大学院です。





